五月人形の選び方
お人形の選び方
人形の特徴と選択ポイント
なぜ節句人形を飾るのですか?
お節句の人形には子供の身を守るとか、健やかな成長を願うといった、お守りの意味合いがあります。ですから、ひとりにひとつというのが基本の形なのです。もし、愛着がある親御様のものを現在でもお持ちでしたら、ひな人形や鎧兜本体だけ、新しいお子さまのものの脇へ一緒に飾られてはいかがでしょうか。ご兄弟が誕生されましたら、本来はひとつずつ揃えられるものなのですが、下のお子さまの分は、お人形本体だけにされたり、ケース入りの人形などにされると良いと思います。
いつ頃注文すればいいでしょうか?
おおよそ、端午の節句なら4月10日頃までには来店されるのが理想です。それ以降になりますと、どちらのお店でも売り切れが発生しはじめて、選択の幅が狭くなります。お節句人形は手作りのものがほとんどなので、それからではお節句までの納品に間に合わなくなります。
どちらのお店も土日など休日は混み合います。比較的、お店が空いている平日に来店されるとゆっくりと品物を見ることができるのではないでしょうか。
お店の空いている時に下見をして、何点か検討したのち、休日にご家族で来店されて決められても良いでしょう。
飾る場所を決める。
五月人形は飾るスペースによって飾り方や大きさが違ってきますので、できるだけ飾る場所を決めてからご来店ください。
最近は「部屋や家具の関係で飾る場所がなかなか見つからない。」とおっしゃるお客様が増えてきました。お節句人形というものは飾る期間は一ヶ月から一ヵ月半です。どうしても場所が確保できないという方は、飾る期間だけ簡単な台などをご準備いただくというのも一つの考え方です。
誰が買うのでしょうか?
「誰が買うのが本当なのですか?」というお問い合わせをいただくことがあります。
地域によって様々な慣習があるように、節句人形を誰が準備するのかということも、地域によって認識に違いがあるようです。例えば、男女どちらが誕生しても女性方の実家からという地域、男児が誕生すれば男性の実家、女児が誕生すれば女性の実家という地域、男女どちらが誕生しても両家から半分ずつ負担して購入するという地域などがあるようです。節句人形は日本古来の文化ですが、男女平等の現代においては、古い慣習にとらわれることなく、ご夫婦、ご両家でお話をされてお決めになられてはいかがでしょうか。
そして、ご家族の皆様お揃いで、お子様の初節句をお祝いいただくのが本来の行事だと思います。
五月人形の選び方
〜 Check Point 〜
鎧兜の部品の多くは、金物を使うためその金物の質によって価値は変わります。
また当然のことですが、細かいところまで手を入れると仕上がりは良くなってきます。良いものは長く飾っても大丈夫であり、見飽きることがありません。
雛人形なら、顔や衣装の色などでお好みがありますが、五月人形の場合は形や色といったものはある程度決まっています。写真だけでは高級品も普及品も判別がつきにくいと思います。
しかしながら、実物を見ると、使う素材や手の入り方によって仕上がり具合が全く変わってくることにお気づきいただけると思います。つまり、色や形がある程度決まっているからこそ、工程の良し悪しがそのまま製品の出来上がりに反映されやすいのです。良いものはそれなりの価格になりますが、出来上がる数量も限られているのです。
良い五月人形は、熟練した職人が全て手作業で一つ一つの工程を経て、時間を掛けなければ出来ない伝統工芸品です。お品選びの際は、お店で鎧兜の説明をじっくり聞いていただいてから決められることをおすすめいたします。
以下に何点か、鎧兜を作る際の技法をご紹介いたします。お品選びの際の参考にして下さいませ。
「小札(こざね)の加工」
「本金箔押し小札(こざね)」
鎧、兜は小札(こざね)といわれる板を糸で何重にもつなぎ合わせて組み上げます。その小札に純金の箔を張って剥がれないように加工したものを本金箔押し小札といいます。純金は金属の中でいちばん安定した物質ですから、長年飾っても色の変化が少なく、かえって取り扱いも楽なのが特徴です。製造工程ではすべて手作業で金箔を張っていきますので手間が掛かります。京都の飾り甲冑ではもっとも古くから使われてきた技法になります。
「黒小札」
小札に黒の塗料を何重にも塗り重ねたものです。
本式のものは漆(うるし)を何重にも塗り重ね、長年飾っても剥げないようにします。本金箔押しのような豪華さはありませんが、全体的に落ち着いた雰囲気に仕上がります。
現存する国宝級の甲冑の多くはこの黒小札になります。
「本金メッキ小札」
小札に本金のメッキを施したものです。一般的に本金兜という場合、この本金メッキのことを指すことが多いです。小札の上にメッキを施しますので、ムラがなく均一に仕上がります。金色をした小札の加工方法の中では最も一般的なものです。
「和紙小札」
関東の甲冑に多くみられる小札で、小さな和紙の断片を何枚も重ね合わせて小札を作り上げ、その上に黒の塗料を塗り重ねて固めた小札です。派手ではないが職人の技が光る、独特の雰囲気を醸しだす加工です。
「鉢(はち)の加工」
「合わせ鉢」
本式の兜の場合は、一般的に「合わせ鉢」というものを使います。これは兜の頭の部分(半球形のもの)を何枚もの鉄板を重ねて製作する技法で、職人がひとつひとつ手作業で組み上げていきますので、工芸品としての美しさを見ることができます。
普及品は鋳物での加工が多く、型の中に溶けた金属を流し込む方法で出来るものですので量産向きの加工とされます。
「縅(おどし)糸」
「正絹糸縅(おどし)」
小札をつなぎ合わせる糸に正絹(天然のシルク)を使うことをいいます。
化学繊維や綿の糸とは違い、正絹の糸は独特の張りとツヤがあり、全体的にふっくらと上品に仕上がります。
唐櫃(からひつ)
「紗張唐櫃」
鎧兜を乗せる箱(この箱の中に鎧兜は全て納まります)を唐櫃といいます。
この唐櫃に紗という薄い布を張って強度をつけたものを紗張り唐櫃といいます。京都の飾り甲冑の多くで使われる技法です。
鎧や兜の仕立てについては少し見ただけでは判らない点が多く、詳細についてはお店に来店されて直接説明を聞いていただいたほうが良いかと思います。しっかり、人形について理解しているお店でしたら、説明してくれます。出来るだけしっかり説明を聞いてから購入されることをおすすめ致します。